体験記3・精神科ナースが精神疾患になって痛感した【パニックと過呼吸】のリアルなおはなし
こんにちは、恩田ゆうかです。
この体験記では、うつ病・不安障害を発症した精神科ナースである私が、患者さんの立場になって初めて痛感できた様々な「テーマ」について、シリーズでお伝えしていきます。
同じ病気や似たような症状を抱えている方、またそういった方を支える側の方々にとって、この体験記がヒントとなり、何かの気づきに繋げていただけるものになればと考えています。
今回のテーマは「パニックと過呼吸」です。
突然の猛烈な恐怖感
その日も、いつも通りの朝になるはずでした。
いつもと違うのは、目覚ましよりも少し早く目が覚めたこと。
そして、まるで冷たい手でつかまれたように、キューンと心臓が締め付けられる感覚。
その朝、私は布団の中で丸くなり、カタカタと震えていました。
とにかく怖くて怖くてたまらなかったのです。
異変に気づいたのは夫。心配そうに声をかけてくれたのですが、得体の知れない恐怖感におびえている私は「大丈夫」「怖いの」と繰り返すことが精一杯でした。
もちろん、こんなことは初めてです。
あまりに胸がドキドキして、クラクラしてきました。
「いつも通りの朝にしないと」
「仕事に行かなきゃ」
かろうじてそんなことを考え、ビクビクしながら2階の寝室を出て、リビングのある1階に向かおうと階段をくだります。
ゆっくりと一段ずつ降りるたび、得体の知れない恐怖感は次第にその鋭さを増していきました。
ドキン!
ドキン!
ドキン!!
ドキン!!!
ドキン!!!!
ドキン!!!!!
階段をくだり切ったところで、恐怖感が頂点に達した、そのとき、
「いやああああこわいいい!!!」
突如、自分でも驚くような声量で叫び声が口をついて出たかと思えば、直後に過呼吸(過換気)に陥り、その場にバタンと倒れ込んだのです。もう何が起きたのか分かりませんでした。
ハァハァハァハァハァハァハァハァ!
(息ができない!!!!)
(苦しい!死ぬかも!!)
普段は冷静な夫も、このときばかりは非常にうろたえていたのを、うっすらと覚えています。
5分経ったか、10分経ったか……
そのときは永遠のようにも感じられましたが、意外とそんなに長い時間は経っていなかったのかもしれません。
しばらくして過呼吸がおさまると、全身の力は抜け、手や足の指先はピリピリし、頭がボーッとしているのを感じました。とても体は動かせませんでした。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をティッシュで拭い、夫に向かって「もう大丈夫だからね」と告げたこのとき、「あぁ、自分はもう大丈夫じゃないんだな」と、ようやく自覚したのでした。
ゆうかのワンポイント
過呼吸(過換気症候群)を生じたら、紙袋を口にあてがって、吐いた空気を再び吸い込むことで、二酸化炭素を取り込む方法がいいと聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
実はこの「ペーパーバッグ法」、現在は推奨されていません。
①低酸素に陥り、最悪の場合は窒息するリスクがある、②紙袋を使用すること自体が不安をあおる可能性がある、などが理由として挙げられます。
過呼吸が直接的な原因となって死に至ることはありません。
「まるで死んでしまうのでは」と思うくらいに苦しかったり、怖かったりしますが、とにかくひたすらに息を吐くことに意識を集中させます。 繰り返しますが、しっかり吐くことが重要なのです。
なぜなら、過呼吸という状態は、息を吸ってばかりで、ほとんど吐けていないから。
必ず数十分以内にはおさまるので、腹式呼吸を意識した深い呼吸、もし手元にあれば頓服薬を内服し、安静にしましょう。
周囲の方は、どうかご本人が呼吸に集中できるよう、そして安心できるように、声かけをしていただければと思います。
体験記4へ続きます。